発達障害とサプリメント
発達障害とは
1.自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの(発達障害者支援法 2005)とされています。アメリカ精神医学協会の診断基準では、神経発達障害(DSM-5)と位置づけられています。
2.発達障害の病態生理として前頭前野の機能不全が考えられています。正常な発達過程では前頭前野の機能は4−5歳に成熟するとされています。前頭前野は、「思考」「学習」「注意」「意欲」「創造」など高いレベルの精神機能の調整を行い、新しいものを調整し、新しい知識を入れ、蓄積した知識と新しい知識を関連付け、TPOに合わせた行動をとるためのコントロールを行います。発達障害と関連づけられている前頭前野での認知過程としては、作業記憶、実行機能、ミラーニューロン、心の理論等が想定されています。
3.発達障害に関連する神経伝達物質
発達障害は脳内における神経伝達物質により行われる神経ネットワークの機能不全状態と考えることができます。発達障害と関係があると考えられている神経伝達物質には下記の4種類があり、それぞれ独自の機能と関係づけられています。
セロトニン(環境因子>遺伝的素因)
必須アミノ酸のトリプトファンから5−ヒドロキシトリプトファンを経てセロトニンになる。
生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などの生理機能と気分障害・統合失調症・薬物依存などの病態に関与しているほか、ドーパミンやノルアドレナリンなどの感情的な情報をコントロールし、精神を安定させる働きがある。その活性の低下と社会性の低下との関連性が指摘されている。
発達過程においては、シナップスの形成維持や可塑性に不可欠であり、左右大脳半球・機能分化にも関連する。
ドパミン(遺伝的素因>環境素因)
フェニルアラニンやチロシンというアミノ酸がチロシン水酸化酵素によってドーパになり、それがドーパ脱炭酸酵素の働きでドーパミンになる。前頭葉に分布するものが報酬系などに関与し、意欲、動悸、学習などに重要な役割を担っていると言われている。ドパミンが極端に少ないと気力が低下し、前頭前野においては記憶、特にWMと関係し、計画を立てて行動する遂行機能に障害を生じる。
ノルアドレナリン
ノルアドレナリンは、チロシンからドーパに、ドパミンの順に合成される。中枢神経系ノルアドレナリンは覚醒ー睡眠やストレスに関する働きをし、注意、記憶や学習などにも影響すると考えられている。
興奮性の神経伝達物質で脳全体に作用し、身体的・精神的に高ぶった状態を引き起こし気分を高揚させる。
ストレスがかかりすぎると枯渇し、二次的な心の病気(緊張→不安神経症→うつ病)を招きやすい。
GABA(ギャバ)
γーアミノ酪酸はグルタミン酸から生成されるアミノ酸のひとつで、基本的にグルタミン酸が興奮性の神経伝達物質であるのに対し、GABAは抑制性の神経伝達物質である。
脳内のGABAが不足すると興奮系の神経伝達物質が過剰になってしまい、イライラや興奮が増し、落ち着かなくなる。
これらのことから、GABAは不安障害や睡眠障害、うつ病や統合失調症などの多くの精神疾患に影響を及ぼしていると考えられており、実際に睡眠薬や抗不安薬の多くもGABAの働きを促進するものが主流になっている。
4.発達障害の治療
発達障害の治療は、子どもに対する理解からはじめなくてはならない。
子どもの行動は奇妙に見えても、理解不能に覚えてもそうしなければならないと思ってしまう事からの行動である。
どのような考えからそのような行動を生じているのかを考えていく場合に、育ってきた家庭を含めた環境要因、学校などの社会的要因を考え環境調整から始められ、ペアレントトレーニングなども含まれる。
同時に子ども自身の行動を行うに至った認知の偏りにもアプローチしなければならず、この認知の偏りが発達障害と称される部分である。
心理学的アプローチには、SSTも含まれる。治療には、薬物療法が選択されることもあるがその場合には、自閉症スペクトラム(自閉スペクトラム症)、ADHD、学習障害があるが、認知の偏りが脳内の神経ネットワークの機能不全あるいは症状が、特定の神経ネットワークと関係していると考え、症状緩和を目指し薬物療法が選択される。
自閉症スペクトラム障害ではセロトニンとドパミンの阻害剤としてSDA(セロトニン・ドパミンアンタゴニスト)であるリスパダール(リスペリドン)、ドパミンとセロトニンの作用を安定化させるドパミン・システム・スタビライザー(DSS)として働くエビリファイ(アリピプラゾール)が使われる事が多い。
ADHDでは中枢神経刺激薬であるドパミントランスポーターやノルアドレナリントランスポーターの働きを阻害することで、脳内で働くドパミンとノルアドレナリンの量を増やすコンサータと非中枢神経刺激薬であるノルアドレナリントランスポーターを阻害すれば、ノルアドレナリンの再取り込みが抑制しノルアドレナリン量を増やすストラテラが使われる。
こういった薬のみで改善しない場合、服薬に抵抗がある場合には食事療法やサプリメントを考慮することになる。
薬物療法は臨床現場にて使われるようになるためには、効果が明らかであること(75%以上の有効率)、重篤な副作用がなく有効性が明らかに副作用を上回っている場合に、各国ごとの基準により承認され、市販後調査も義務付けられている。
そのため医療現場においては、エビデンスが明らかでないサプリメントを使用することには抵抗があった。
特に我が国で許可されていたサプリメントは、必要量としての基準であり量を多く使う治療的な使い方については明らかな診断が得られなければ許可されていなかった。
ビタミンB6欠乏症など。
欧米諸国においては、有効性の報告があったり欠乏が想定される場合には積極的に投与を行い予防的治療を行うことが推奨されている。
特に発達障害においては、症状を緩和する薬物しかなく、治癒させる薬物があるわけではない。
そのため、海外にて有効であることが報告されているサプリメントについて文献を渉猟し、量を同定しどんぐり発達クリニックではサプリメントも積極的に治療に加えている。
※発達障害とサプリメントの使用例(以下の項目をクリック)
1.自閉症と腸の役割
2.ADHDとΩ3
3.トラウマ予防とΩ3
4.鉄不足(フェリチン低値)とADHD
5.ビタミンB群の重要性
6.自閉症と偏食
7.幼児期の睡眠障害